休日の午後、小腹も空いたしどこへ行こうかと相談し、そうだタコスを食べに行こう!と突然思いついた。タコスとくれば当然メキシコだ。食べて帰ってくるだけだから、まぁ、国境越えが早くて1時間、待っても往復2時間で帰ってこれるだろう。ところが、このあと恐ろしい運命が待ち構えているとは、そのときは思いもよらなかったのだった。
サンディエゴから車でメキシコ側の国境の町ティファナに入るのは、うちから20分たらずだ。アメリカからメキシコに入るときは、もちろんノーチェック。待ち時間ゼロ。パスポートの提示すら必要ない(しかしアメリカに戻る際には絶対に必要)。行きつけの店でタコスを食べる前に、今回は見てみたいところがある。陸路での国境は徒歩でも車でも何度も越えたが、果たして海の国境はどうなっているのかということ。
不法に国境を超えてアメリカに渡ってこようとするメキシコ人が、年間何万人も命を落としていると聞く。国境の壁に立てかけられた、果てしなく続く十字架の数々。国境では麻薬の密輸が摘発されたり、アメリカ側の犯罪者が国境を越えてメキシコへ逃げたり、地続きの国境をめぐる事件は頻繁におこっている。
ティファナの町から、海まではまっすぐ西へ約15分程度で行ける。初めて見る海の上の国境はこんな感じ。
右アメリカ、左メキシコ →
海上数キロに渡って国境の壁があるかと思いきや、海上にはほんの数メートルしか柵はない。びっくりした。これなら多少泳げる人なら楽に越えられる距離。しかし、もちろんそんなに簡単なはずはないのだった。柵には大きな字で、『DANGER OBJECTS UNDER WATER(海底に危険物あり)』と英語とスペイン語の看板がかけられており、注意がよびかけられている。白い砂浜のきれいな海岸には、アメリカ側でもメキシコ側でも平穏に海水浴をする人たちの姿が見えるが、無粋な国境は砂浜だけでなく海底にもしっかり設置されているのだった。
陽気なメキシコの海岸 →
メキシコの砂浜には、屋台の出店がでており、にぎやかなメキシコ音楽がかかっているところが、アメリカと違うところだ。国境の柵といっても、木の間隔は20センチ近くもあるので、手を伸ばしたりできるし、子供だったらそのまますりぬけられそうな感じ。柵のすぐ近くのメキシコ側で、果物(マンゴ、パパイヤ、ココナッツなど)とお菓子の小さい屋台が出ており、アメリカ側の海水浴客の一人が国境をはさんでお菓子を買おうとしていた。おぉ、アメリカ側にも商品を売っているとは手広い商売だと感心していると、さっそく飛んできた国境警備隊。砂浜を一望できる高台に警備の車が停まっており、厳しく監視しているのだ。このときも警備隊にみつかって売買は成立しなかった。きっと人が超えようとしたらその場で撃ち殺されるに違いない。
こういう光景を毎日目にしていたら、どんな気持ちになるだろう。自分がメキシコ人だとしたら、さぞかし感じ悪いと思うに違いない。もともとカリフォルニアはメキシコ領土だったのだ。そういえば以前ESLのクラスで、戦争の話題になったときに、メキシコ人の男の子が「ここ(サンディエゴ)だって本当はメキシコのものだったんだ!」とアメリカ人教師にむかって食って掛かっていたのを見たことがある。そのとき先生は「Yes, we took it!(そうよ、私たちが取ったのよ)」と堂々と答えていたのが、いかにもアメリカ人らしいと思ったのだった。
こんなこと書くといかにも陰鬱な国境の光景のようだが、そこは陽気なメキシコ人たち。私たちにどこから来たのかと話しかけ、自分の写真を撮ってくれとポーズをとる。彼が楽しそうにもっているのは、アメリカとメキシコの国旗がつながった布。こんなのいつも持ち歩いてるのか。
陽気なメキシコ人。 →
国境見物のあとは、ティファナのダウンタウンへ戻りタコスを食べて、はい帰国。と思いきや、アメリカへの国境越えはかつて見たことのないほどの大渋滞だった。そうだ。今日は3連休(Labor day)の最終日、しかも夕方のラッシュ時だった。あまりの激しい渋滞に恐れをなし、ティファナの次の検問所オテイメサを目指したが、それがまた失敗の始まりだった。あまり通りなれないオテイメサの町は、どれくらい混雑しているのかも分からないまま、行列の後ろについたが、永遠と車は続き、いっかな国境は見えやしない。
結局並んでからアメリカに着くまで約4時間。国境越えの最長記録だ。途中トイレには行きたくなるし、行列がめちゃくちゃなため、激しい割り込み合戦で精神的に消耗はするし、タコスを食べに行ったというのに、行列の車の中ですでにまた空腹になってしまうし、踏んだり蹴ったりだ。検問所では嫌がらせのように、のろのろと1台ずつ車をチェックし、パスポートのページを一枚一枚ゆっくりめくっている。通常だと日本人の私たちはほとんどノーチェックで通れるのに、今回はいろいろ質問され、トランクまで調べられた。
家に帰ってからJが調べたところ、私たちが並んだ行列の長さはたったの約2キロ。つまり時速0.5キロというひどさだ。お盆の帰省ラッシュよりひどい。あー疲れた。もう当分メキシコなんか行きたくない。
国境の長い行列。 →
コメント (8)
いいなー、メキシコ行ったんだ、タコスおいしそうだなー、と思ったのは束の間(笑)。
2キロで4時間。走っても10分かからないのにーーー。
本当にお疲れさまでした~。
海の国境、こんなふうになっているのですね。
写真で見ると、平和そうで、えらくあっさりした国境に見えるのに。
投稿者: マルコ | 2006年9月 9日 21:15
お久しぶりです♪
やっと元気が少しは復活したか?と思える水樹です。
タコス!!!!
良いですね><
食べたいー><
そうそう、メキシコではありませんが…
浜松で美味しい本格イタリアンのお店を発見しました。
きちんとフルコース。
お値段もきちんと高い(涙)
二ヶ月か三ヶ月に1回くらいしか行けないけれど…
アメリカにはタコスの瓶詰めが売っていると見ました
(海外ドラマで…)
本当ですか?!
日本にもぜひ輸入してくれー><
ポテトチップスかプレーンのクラッカーに着けて食べたい。
しかし、すごい渋滞ですね。
私、混む時間帯は絶対に車走らせません。
よほどの用事があれば別ですが…
歴史の不思議なのですが…
敗戦国の日本はどうしてこんなに自由で
メキシコは領土取られたんでしょうね…。
日本なんて基地作るだけで大騒ぎしています。
敗戦国なのに…
変な話ですよね。
投稿者: 水樹 | 2006年9月10日 05:30
タコス食べたーい。
タコスを食べにメキシコへ、なんて、いいなあー
昔ロス&サンフランシスコへ行ったとき、
メキシコ一日ツアーがオプションであったのですが、
なんとなくメキシコがこわくて(バスジャックとかの話も聞いていたので)行かなかったのでした…
今日の猫のソフィーちゃん、今日も可愛い!
投稿者: にゃうちろ | 2006年9月10日 16:46
>マルコさん
この日はマルコさんが、ゴルフに参加できるかどうかの
瀬戸際(?)の日だったでしょ。だからもしお暇だったら
お誘いしようかな~なんて思っていたんですよ。
渋滞の最中、あぁ誘わなくって本当によかったと心から
思ったものでした^^; 今までで最悪の渋滞でしたよ(涙)。
海の国境は一度見に行く価値があります!びっくり
しました。海底にはいったい何が埋まっているのだ...。
>水樹さん
こんにちは!
本格イタリアンのお店きっとおいしいのでしょうね。
いいですねぇ。しかしすっかりアメリカの大量の盛り付け
に慣れてしまった今、日本の上品な盛りではきっと
満足できなくなってしまっただろうと、悩む今日この頃
です^^;
以前アメリカ人の知人が言っていたことですが、歴史は
それぞれの国によって違うように伝えられているものだ、
そうです。私もそう思います。立場が違えば、意見も
違う。違う立場の人同士で話したときに、このエント
リーに書いたアメリカ人教師のように、堂々と自分の
意見を言えるような人間でありたいなーと思います(^^)
タコスの瓶詰めってなんでしょうねぇ。もしかしてサルサ
の瓶詰めではないでしょうか?!タコスのは見たこと
ないですが、もし売っていたら私も食べてみたいです!
サルサならたくさん売っていて、メキシコ行くと安いの
でいつも買って帰ってきてます~(^O^)
>にゃうちろさん
タコス、メキシコで食べるとマジうまです!メキシコ人
でいっぱいの店を選ぶと、ほとんど失敗ないです。
メキシコ一日ツアーというのがあるのですね。LAから
きっとサンディエゴは素通りで(涙)、ティファナに
行くのでしょうね。今度もしいらしてくださるのなら
このわたくしが、ディープな店にご案内いたしますよ~ん。
うん、確かにサンディエゴよりもメキシコのほうが
見所満載だろうなぁ、悲しい...。
投稿者: noir | 2006年9月10日 23:34
渋滞、お疲れ様でした~。
おいしータコスのためとはいえ、大変でしたね。
タコスの瓶詰!?もしもあったら私も食べてみたい。笑
アメリカ人の良くも悪くも強気で堂々としているところ、メキシコ人の陽気で人なつっこく親切なところ、どちらも好きです。
そのアメリカとメキシコ国境の海底にどんなおっかないものが仕込んであるのだろー?
そのおっかないもの、日本の国境にも仕込めないかなー?
投稿者: k | 2006年9月11日 04:10
ごめんなさい。
サルサソースです(汗
タコスが売っている訳ないですよね…orz
投稿者: 水樹 | 2006年9月11日 05:31
小腹がすいて、メキシコへ!
夢のようなお話です☆
しかし、国境はすごい事になっていたのですね。
メキシコ、行ってみたいけど小心者の私はコワ~イイメージ。
またまた、シャーっ!で終わってしまうよな。。。
昔バッファローから車でナイアガラの滝を見にいったんですが、車でカナダに入る時、ナゾの東洋人3人組は、やたらからまれました。
あれは、今思えば、イジメだったなぁ。
投稿者: モモねこ | 2006年9月12日 06:30
>Kさん
渋滞まじですごかったです。未だかつて無いくらい。
そういえばKさんと一緒に行ったときも、オテイメサで
渋滞してましたよね。
何よりあの、行列がめちゃくちゃなのが、神経をすり減ら
します。こら、アメリカ人、本国で運転するときは
マナーいいくせになぜ他の国では強引な割り込みするのじゃ~!
海底のおっかないもの、ってなんでしょうね。魚は
大丈夫なのかしらと心配してしまいました^^;
>水樹さん
おぉ、やっぱりサルサソースでしたか♪びっくりしたー。
サルサの瓶詰め売ってますよ~。缶詰も。
私も大好きです(^O^)
>モモねこさん
ふふふ。国境のあのマナーの悪い渋滞に居合わせたなら
別の意味でシャーってなってしまいそうですよ。
おぉ、モモねこさんはカナダにもいかれたことがあるの
ですね。いろんなところに行かれてますね~。
私も一度だけカナダとの国境を通ったことあります。
確かに恐ろしく感じ悪かったです^^; これって人種差別か?
それともたまたま?涙
投稿者: noir | 2006年9月13日 03:55