猫にごはん

 

 

 

 

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きれいな日本語

このサンディエゴで陶芸の個展をひらくというので、日本から高名な(たぶん)陶芸家の先生がいらした。何の縁かは知らないが、いつも行っているceramicの教室で陶芸のデモンストレーションをしてくれるという。
雨の土曜、早朝にもかかわらず、今日はたくさん人が集まった。「Japanese famous artist...」などとあちこちで話し声が聞こえる。かなり期待が高まる。日本の陶芸は、アメリカでも人気があるのだ。
現れた先生は、黒っぽい服を着て髭をたくわえた、年のころ50近くの小柄な日本人。確かに芸術家っぽい。しかし、「それじゃ、やりましょうかね」と、何らもったいつけずにたんたんと粘土を用意し始めるところが、職人風でもある。数種類の粘土をまぜ始める。なんと7ポンド(約3.5㎏)もの重さだ。そんな大量の粘土を、小柄な日本人がもくもくと力強く捏ねだしたものだから、みな一斉に息をのむ。
先生「"荒練り"といいます」
通訳「This is rough kneading.」
リズミカルに練るく土は、一見柔らかそうだがとてもとても硬いのだ。しかもこんなに大量の粘土。普通できたものではない。さすが先生。どんどんきれいな形に練りあがっていく。聞けば、150回は練るそうだ。信じられない力仕事だ。
先生「これが"菊練り"です」
通訳「The way of kneading likes flower"kiku"」
今日通訳をやっているこの日本人女性、とーっても英語がうまい人なのだ。しかし、しかし、日本語のこのニュアンス、英語で伝えるのは非常に難しい。
それから先生は、ろくろを使って、壺、皿、器など、あっという間にどんどん作り上げていく。ほんとうに見事なものだ。最後に、ろくろを囲む50人近くの見物人が、一斉に「おぉぉぉぉ!」と驚きの声をあげた。なんと先生は、直径30cmはある大きな皿が出来たにもかかわらず、「これは失敗ですね」と、ぐちゃぐちゃ~っと壊してしまったのだった。もったいなー!でも確かに芸術家だ、この人は。なんて職人っぽいのだろう。
見ていてとても勉強になるデモだったが、私が何より感心したのは、この先生の使うきれいな陶芸用語だった。土殺し(高く上げた粘土を下げて、空気を抜いたり粘土を均一にすること)、指跡(ゆびあと)、型起こし(かたおこし)、貫入 (かんにゅう/ひび割れのこと)などなど。なんと美しくて趣のある日本語だろう。こんなきれいな表現を、英語になど訳せようはずもない。普段聞いている英語の説明が、どんなに味も素っ気もないものかよく分かる。高台(こうだい)や糸底(いとぞこ)を、ただbottomと呼んでしまうのでは、伝わるニュアンスが大違いだ。
なーんて言ってはみたけれど、実際まだろくな器もできないような初心者なので、どちにしろそんな微妙な和のニュアンスなんぞ表現するには10年早いのだった。
IMG_5043_sn.jpg

コメント (10)

陶芸家。どなただったんでしょうかねぇ。
実は私、陶芸などの工芸品の販売員をこの7月まで13年間していました。
日本全国各地の百貨店の美術画廊で・・・。
本当に、作品の出来上がっていく様はまさに魔術ですよね。
茶陶なんかだと専門の用語も多くて・・・・
高台も呼び名が色々あるし。英語に訳すのって大変でしょうね~。


数年前、ちょっとしたきっかけで陶芸をする機会がありまして。。かなり魅了されてしまいました。
陶芸の先生(男性)に土を扱う手が艶っぽいなどと言われてしまいました。。(アハハ

いずれ、もっと時間ができたら趣味としてもっと極めてみたいと思っております。


陶芸も楽しそうでいいですね。
弟が陶芸教室やってたのに、教えてもらわず残念な事をしました。
私がやると、縄文式土器になりそうですが・・・


陶芸、楽しそうですね~。私も興味はあるんですが、思い腰があがりません。 こういうデモンストレーションは、みてみたいですね~。 すっごく楽しそう! 


>nyaoさん
おぉ、nyaoさんは画廊で働いてらしたのですね。
今回いらした陶芸家の方は、Uchida Yuji さんという
方で、和歌山に住んでいらっしゃるそうですよ。
私は全然聞いたことありませんでしたが、有名な方
なのでしょうか?
こういう専門用語勉強するのたいへんでしょうね。
nyaoさん、かなりお詳しそうですねー。それも高級なのが。


>bunnyさん
土を扱う手が艶っぽいとな?
それセクハラですよ。訴えたほうがいい(笑)。
いやいや、さすが色っぽい方は違う!私なんぞ、爪の間に
土入りまくりで、まるで子供の泥んこ遊び状態ですよ。
わはは(笑ってる場合か!)。


>まえこさん
弟さんは陶芸の先生なのですか!ぜひ教えてもらいたいなー。
『縄文土器』、するどい!
私が一番最初に作った、象の足つきプランターはマヤ文明の
遺跡から発掘されたのではないかと、疑惑がもたれている
くらいです(笑)。まぁ、未だに土器から成長してないん
ですけどね~。


>雅子さん
やっぱりサンディエゴに引っ越してきませんか(誘惑してみる)?


日本語を英訳するのって難しそう。
土殺しなんて、直訳じゃ意味が伝わらないし…。
それにしても、noirさんといい、にゃん~mamaさんといい、趣味がいいな~♪
私も陶芸やってみたいよ! (^_^)


陶芸ですかぁ。
私の母やってますよ。
近所のオタクで釜(陶芸用の?)を買ったらしく
いつもそちらに行って月1回くらいやってるみたいです。
なので、私が実家に帰る度に母の作品を持ちかえっているので
我が家の食器は母のものばかり。たまに割ってしまったりすると「あっ。お母さんに何かあったかな?」って心配になっちゃうんです。ちなみに家の母は「貞子」って言うんですけど、
全部の作品に「貞」ってかいてあるので、みんなに「リング」みたいで怖いって言われます。


内田ゆうじ先生ですか。
私も陶芸家の事にはとんと知識がないもので。
でも大量の土を練っていくのは、うちの先生を見ても
男の仕事?私にはできないといつもぼ〜っとみています。菊練りは練習すればできると、うちのBLOGにきてくださる、陶芸家の霜馬さんがいわれてました。
でも、目の前で、きっと息つく間もなく形されたのでしょうね。圧巻ですよね。
でも土をいじる時って、集中しちゃって、作るまでって、あっという間。
自分の中で造っていくっていうか。
自分だけの世界になっちゃうっていうか。
はあ〜でも自己マンの器もいいけど、
やはりうまくなりたいなって気持ちもある。。
アメリカで陶芸って人気あるのでしょうね。
皆さんすごく熱心にみてらっしゃる。

あゆさんのお母さまのサインのお話、いいですね。
私はいつもいろいろなサインをするので、先生に
これは誰のだといわれ皆に笑われます。
ちなみに、名前ではおもしろくないので、
猫マークとかにくきうマークとか入れてみたり
します。


陶芸をされてる方ってそんなに多くないと思ってましたが....。さすがnoirさんのHPに集まる方々は違いますねぇー。
昔は、皿なんか料理がのったらええわーと思ってたのですが、最近は、器で料理の見栄えがぜんぜん違うということにようやく気づき、すこーし陶芸にも興味がでてきたところです。でも自分で作る機会はなかなかありませんなぁ。
アメリカのコミュニティスクールってほんと行きやすいしただがただ同然だったりしていいよねぇ。


>くろねこ・ママさん
『土殺し』ってなんだか趣のある言葉ですよねぇ。
陶芸やっていながら、初めて聞きました。やっぱり
日本語はいいですねぇ。
通訳の人は『ツチ、ゴロシ』と問答無用で直訳して
ました(笑)。ママさんもぜひやりましょ!


>あゆさん
近所のお宅が「オタク」になってて何だか笑える。
>リング
爆笑!お母さまのサインかわいい!
ちなみに私もサイン入れてます。にくきうですけど...。
陶芸やってる方ってけっこう身近に多いものですねぇ。
びっくりです。


>にゃ~んmamaさん
mamaさんも?!私もにくきうのスタンプ押してますよー。
猫の食器作るはずが、失敗作ばかり。成功すると、つい
人間用に使いたくなっちゃって...。
菊練り、本当にすごかった!みんなびっくりしてました。
特に体の小さな痩せた方だったので、そのたくましさは
どこからでてくるのかと、外人もびっくり!
私もうまくなりたいけれど、あれ見てて、陶芸は男の仕事
かもと思ってしまった。ジェンダーフリーを求める方々には
聞かせられないセリフですが(笑)。


>あきこさん
ほんとに、陶芸やってる方ってたくさんいるのだなーと
驚くね!何でだろ。
私の行ってるクラスでも、日本人の比率はとても高い。
日本人って陶芸好き?!ちなみに、ただのクラスです。
粘土代だけ。ありがたいことです。


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