熱心な猫
ノアは砂かけをよくやる。うちではこの砂かけのことを、『いらない』やっている、と呼んでいる。しかし、知り合いの猫飼いのところでは『ばっちい』『きたない』『ごちそうさま』などとこの砂かけを称していることを私は知っている。いろいろなローカル言葉があるのだ。
ところでノアのこの『いらない』、普通の猫がやるように、食べ終わった自分の皿にだけではない。人間の、それも特定のものに対してまで、空想の砂をかけるのだ。まずノアが一番大嫌いなのが、コーヒー。飲みかけのコーヒーカップをそこらに放置しておくと、目ざとくみつけてすぐにやる。
コーヒーいらなーい。 →
それはまるで、早く片付けない私に抗議するかのように、執拗にいつまでもいつまでも砂をかけつづける。
ノアがこんなに砂をかけるので、バランスの悪い倒れやすいマグカップを、うちでは過去に2個捨てたことがある。かわいいカップだったんだけどなぁ。熱々のコーヒーが入ったカップを倒し、自分の後ろ足がコーヒーまみれになってまでも、いらないを続けたことのあるこの猫。やけどするから、やめてくださいね。なので、うちではバランス良くがっしりしたカップしか使えないのだ。現在私が家で愛用しているのは、蓋つきトラベルマグ。うぅぅ。
気に入らないときは、ソファでコーヒーを飲んでいる最中の人間にも、「いらなーい。いらない」。な、なにもそんなに嫌わなくても。不思議なことに紅茶や日本茶のときはあまりやらないのだ。よっぽどコーヒーに嫌な思い出でもあるのか。
この猫がそれ以外に嫌っているのが果物全般で、買ってきて袋に入ったままの果物にもそれはそれは熱心に砂をかける。特にむきになるのが、柑橘系。こんなこと他の猫もするのだろうか?ソフィーが人間の食べ物に対してやっているのを一度も見たことがない。
朝起きて、リビングのラグマットがぐちゃぐちゃに丸まっているのを見つけると、その中になにか埋もれていることが容易に想像できるのだった。今朝発掘されたのは、グレープフルーツが1個。前の日、安かったので大量に買っておいたのが棚からこぼれ落ちたのだった(5個で1ドル)。きみのごはんじゃないんだからね、砂かけもいい加減にしてくださいね。
そして床にコーヒーカップを放置する癖のある人、ちゃんと片付けましょうね。