別れを告げる猫
数日前のエントリーでも書いたが、友人Lがいよいよ日本へ旅立つ(帰る?)ので、週末は最後にうちで一緒に夕飯を食べることにした。Lが懐かしがるかもと思い、日本風のシンプルなカレーを用意。そしてLには、頼んでベトナム生春巻きを作ってもらった。
この人はベトナム系アメリカ人で、住んでいる年数としてはアメリカのほうが長いくらいなのだが、さすがにこういう料理を作らせるとうまいのだ。今までにもいろいろベトナム料理を教えてもらったが、今日は基本にかえって生春巻き。とはいえ、私ももう自分ひとりで何度も作っているので、必要な材料は全て完璧にそろえられる。あとはLに巻いてもらい、タレを作ってもらうだけの予定、だったのだが...。
いくつもダメ出しされてしまった。
きっちり並べて →
数年前にちゃんと教えてもらったんだけどなぁ。だんだん自分のやりやすいよう適当にアレンジしていたのか。まずはレタスの並べ方、香菜の切りそろえ方が違うとな。さらに、巻く直前にブン(米の麺)を乾燥させ温めることなどすっかり忘れていた。エビも豚肉も並べ方が違うと指摘される。うーん。全然ダメじゃん。
久しぶりにLに作ってもらった生春巻きは、それはそれはタイトにしっかり巻き上がっていて、同じ材料を使っていても、巻き方並べ方によって随分味が違うものだと実感する。Lが作る出来たての生春巻きは、今までどこの店で食べたものよりも本当においしいのだ。さすがじゃ。
しっかり包む →
日本語のできないLは、日本では娯楽が乏しい。そこで今回は、いくつか英語字幕付きDVDをもたせてやることにした。その他日本行きのLのスーツケースの中身は、これでなくては絶対ダメだという超お勧めの生春巻きの皮、チリソース、ニョクマム(ベトナム魚醤)など日本で手に入りにくいものであふれかえっている。しっかりがんばるのだよ。
ところで、うちの人見知り猫ソフィーは、お客さんがくると、その人が帰るまでずっとクローゼットの隅に隠れてでてこない感じの悪い猫だ。ところがこの日、Lが来たときは、いつもと同じ何食わぬ様子ででてきた。そして玄関にある見知らぬ靴を見て『ぎくっ』と立ち止まり、恐る恐るリビングの様子をうかがう。Lの姿を見て逃げるかなと思いきや、そのまま餌を食べ、毛づくろいをし、別に普段と変わる様子がない。
そうか。この猫が怖いのは、知らない人の声だったのかと納得。耳の不自由なLとの会話は、片言英語手話と筆談だけなので、リビングもいつもに増してとても静かだ。静かな部屋の片隅で、毛づくろいしてくつろぐソフィーの動く音だけが聞こえる。あぁ、この猫がこうしてお客さんの前で平気でいるなんて、仔猫のとき以来だ。感動的だー。
いつもと変わらないソフィーは、Lになでられても普通にしていた。もう当分会うことのないLに、ソフィーもさよならを言いたかったのかもしれないね。Lはおとといの朝、日本に旅立った。今ごろはもう、久しぶりに会う旦那と団欒のときを過ごしていることだろう。元気でねL。幸せになるのだよ。
見た目も美しい生春巻き →