再び国境
先月見たばかりの海の国境(メキシコとアメリカの国境)の、今度はアメリカ側の海岸へ行ってみた。両側から、こうして国境を見るのはとても不思議な感じ。私たちはどっちにも気軽に行けるのに、ここを命がけで越える人もいるのだ。
この海の国境、メキシコ側の柵には「危険物海底にあり」など、国境を越えないよう注意書きの看板が大きく掲げてあったものだが、アメリカ側には注意文言などどこにもない。何もない。アメリカからメキシコへ密入国する人などいないのだ。海岸にはただ柵があるだけ。海岸にもほとんど人気はない。こんな辺鄙な海岸にわざわざ遊びにくるのは、物好きな観光客(私たち)と、そして、メキシコに残してきた家族と国境越しに再会する人々なのだった。
国境越しのピクニック。→
このメキシコ人家族は、国境をはさんで海岸でピクニックをしていた。なんだか切ない光景ではあるのだが、実際はタコスやお菓子を食べながら楽しそうにおしゃべりしていたのだった。メキシコ人は陽気だ。カメラを持っている私たちをみかけると、Vサインをしたり、カメラに向かってにっこり笑顔を見せてくれる。なので写真を撮るこちらも、気が楽でいい。
先月この国境に来たときには、柵越しにの屋台で何か買おうとしていた人に、アメリカの国境警備隊が厳しく注意をして売買は成立しなかった。しかしこの日見張りに立っていた国境警備隊員は、とても大らかな人柄らしく、全然平気。何も注意しない。メキシコ人たちも平気だと分かっているのか、なんとふざけて柵(国境)をすり抜けて遊ぶメキシコ人(大人)までいるではないか。信じられない。いいのかこれで。売買ももちろんじゃんじゃん成立している。海岸にいる『流し』のベサメムーチョ楽団に、アメリカ側から曲のリクエストをしたりしているカップルもいた。
国境越しのベサメムーチョ。→
ちなみにこのベサメムーチョ楽団は、メキシコの観光地のそこら中にたくさんいる。たいていは3人で、このようにギター、アコーデオンなど抱えて街中を練り歩き、どこででもリクエストに応じて歌ってくれる。というよりも、ご飯を食べていたりすると、近寄ってきて勝手に演奏を始めてしまうので、『No』と最初に断らないといけないのだ。初めてメキシコに遊びに来たとき、私とJは勝手が分からず、突如始まった陽気なメキシコ音楽にあっけにとられているうちに、チップを請求されたものだった。くやしかったので、『ラ・バンバ』を歌えるか、とリクエストしたところ、もちろんだと彼らが胸を張って演奏を始めた曲は、『ベサメムーチョ』だった。違うじゃん。以来、私たちは親しみを込めてベサメムーチョ楽団と呼んでいるのだった。
音楽に合わせてぴったりくっついて踊る陽気なメキシコ人カップル。みんな楽しそうだね。今日は国境もほのぼのした休日の雰囲気だ。
そもそも今日の目的は海の国境を見に来たのではなく、アメリカ側のそのすぐ近くにあるアウトレットで買い物をすることがメインだったのだ。なので私たちは国境越えはしない。いろいろ買い物してご飯食べておしまい。このアウトレットは、従業員も客もメキシコ人比率が非常に高く、ほとんどスペイン語が公用語と化している。広くて混んでなくて、なんとなく大らかな雰囲気のある気楽なアウトレットだ。ここから渋滞の全くない広いハイウェイを飛ばして帰ると、20分足らずで家に着く。同じメキシコ側の海の国境から、前回は4時間もかけて検問を通ってきたのにね。今日は楽チン楽チン。
右アメリカ、左メキシコ→