国境の向こう側
今日のお昼ご飯は、久しぶりにメキシコでタコスを食べることにした。噂に聞いていた、オタイメサにあるという行列のできるタコスを求めて、いざ出発。ところが予想に反して、オタイメサの町は案外広くて、その店は見つからなかった。仕方がないので、ティファナまで約20分、車で移動することにした。
ティファナの町中から少し離れたところに、魚市場がある。そこは新鮮な魚や海老や貝がずらりと並び、いつも地元の人たちでにぎわっている。メキシコの魚市場に行くのはエンセナーダに続いて2回目だが、どちらも魚が新鮮なせいかにおいがあまりしない。魚は切り身になっているものが多い。どれもほんとうにおいしそうだ。
町中の帽子売り。 →
魚市場の目の前にある、タコス屋でお昼を食べることにした。全く英語が通じない。タコスを2つ(dos tacos)、というのだけかろうじて分かってもらえたが、水(agua)が分かってもらえず、替わりになぜかアイスカフェラテのシナモン入りがでてきた。なじぇ?いったいどうやったら、こんなものが注文できたのか本当に不思議だ。タコスに入っていた具は、新鮮なマグロのソテーと野菜。魚市場らしいですね。
マグロのタコス。 →
続いて、ティファナでは、いつものホセの屋台ではなく、2度目に行くタコス屋でおやつ。昼ご飯とおやつがともにタコスだが、まぁいいだろう。以前来たときは、あばら家のような風情だった店が、すっかり改装されて小奇麗な食堂になっていた。しかし、作っている人たちはあきらかに以前と同じ家族と思われる一家そのままで、雰囲気も良い。タコスは、パストール(焼き豚肉)とカルネアサダ(牛肉)を食べた。ここのパストールは作り立てで香ばしくてとてもおいしい。グァカモレ(アボカド)もライムも新鮮で、いい感じ。
ここの店が他と断然違うのは、タコスを包むトルティーヤという皮を、その場でおばあさんがこねて、トルティーヤ型に入れて形を作り、ぱりっと焼いてくれることだ。いくら見ても見飽きない、そのトルティーヤ作りを、カウンターで眺めていると、焼いた野菜をサービスで出してくれた。ワケギくらいの大きさのネギを丸焼きにしたもの、グリーンチリの丸焼き、そしてそして、サボテンの葉の丸焼き。一度食べてみたいと思っていたサボテンの葉。肉厚で、ジューシーで、まるでピクルスのようなさっぱりした味がする。こうしてよくよく焼いて食べると、どれも甘味があってとてもおいしい。ごちそうさまでした。
左カルネアサダ。右パストール。 →
ところで、オタイメサからティファナの町までは、永遠と続くアメリカとの国境沿いの道を行く。高さ3メートルくらいの薄い塀の向こうは、アメリカとの干渉地帯が一キロ余り続き、その更に向こうにアメリカ側の国境の塀がある。
そしてメキシコ側の国境の塀には、ずらりと数キロに渡って、十字架が貼り付けられている。この小さな十字架には、塀の向こうにある、豊かな自由の国へ渡ろうとして、悲運な最後を遂げたメキシコ人たちの名前が、一人一人刻まれている。サーチライトが並ぶその干渉地帯は、近いようで果てしなく離れているのだ。
やるせない十字架の道。 →